ペット・ショップとの死闘に見事勝利し、DIOの館へ承太郎達を案内するという大役を果たしたイギー。いよいよ、その戦歴のページも最終章へ突入します………。
■戦歴・後編7)DIOの館突入・VS.ケニーG ジョセフ・承太郎・花京院の三人がダービーに連れ去られてから10分が経過、残されたアヴドゥル・ポルナレフ・イギーの二人と一匹は、館への突入を決めます。
この時のアヴドゥルとポルナレフのやり取りが、後から読み返すと凄くじわっと来ます…。
旅の目的は、あくまでDIOを倒す事。一人を助けようとして他のメンバーも巻き添えになり、全滅するのだけは避けなければならない…と、アヴドゥルはポルナレフとイギーに言います。
「わたしは、もし この館の中でお前が行方不明になったり負傷しても助けないつもりでいる…」 ――と。
「生きて出てこれたら豪勢な夕飯をおごれよ」
「イギーにもな」 ………時刻はこの時、午後1時を回って間も無い頃だったでしょう。
ディナーの始まる時間、果たして誰が館を「生きて出られた」のか?
それは後述するとして。
館の中に「幻覚」を作りだしていたスタンド使い・ケニーG。
アヴドゥルの「魔術師の赤」による生命探知+イギーの嗅覚で位置を掴まれたそいつは、一瞬にしてイギーの「愚者」の前にリタイヤとなりました。
…これを見る限り、イギーの「愚者」は攻撃力的にも
少なくとも生身の人間の体位なら一撃でボコボコに出来る位のパワーはあるのだなぁと思いました。どちらかというと、防御や目くらましに使う印象が強い「愚者」ですが、砂を固めて攻撃すれば、攻撃力といった面でもバッチリ。
…もうちょい、「愚者」での戦闘が見てみたかったと思います。
――さて、一瞬にしてケニーGを倒したイギー。かっけぇぜ!!
しかし、恐怖はそこからでした。
館の間取りが元通りとなり、改めて中へと進もうとするアヴドゥル達。しかしその時、アヴドゥルはある落書きを目にします。
「このラクガキを見てうしろを振り向いた時、お前らは死ぬ」
………アヴドゥルの生命探知にもイギーの鼻にも全く異常は感知されない中、不審に思い振り向いたアヴドゥルは、そこに信じ難い光景を目にしました。
何も無い空間から、突如としてその口を現したヴァニラ・アイスのスタンド「クリーム」。
咄嗟にポルナレフ達を突き飛ばしたアヴドゥルは、一瞬にしてその両腕だけを残して粉々になりました………。
「アヴドゥルーッ!!」
何の気配も無く。匂いも無く。生命反応も無く。
突如現れる神出鬼没にして凶悪なスタンド「クリーム」を操る最後の刺客、ヴァニラ・アイス。
死闘は唐突にその幕を開けました……。
8)VS.亜空の瘴気ヴァニラ・アイス 唐突過ぎるアヴドゥルの死に激昂、「銀の戦車」で攻撃を仕掛けるポルナレフですが、亜空間に身を隠したヴァニラ・アイスは容易に攻撃出来ません。
なすすべも無く、とにかく場所を移動するポルナレフ&イギー。
何気に
部屋を脱出⇒ドアを閉める⇒家具でバリケードを作る時、
イギーが一緒にデカいソファーを抑えてる姿が可愛いです。…いや…イギーの力じゃ無理だろ…(^^;)何気に「愚者」の力も使ってたんですかね。
しかしそんなバリケードも、ヴァニラ・アイスの攻撃の前には無意味でした。
対策も思い浮かばないまま、上階へと逃げるポルナレフ&イギー。しかし先回りされている事の証に、その床には既に巨大な穴が……。
互いに死角をカバーすべく、背後を見張るポルナレフ&イギー。
……
ポルナレフの肩にちょこんと乗っかってるイギーがメッチャ可愛いです。こんな時なのに。
そしてこの辺、一連の動作を見ていて、イギーの方は矢張り人間が何を言っているか理解出来てるんだなー…と思いました。見事なまでにポルナレフの言葉にキッチリ従ってますし。
しかし、どこからでも出現可能なヴァニラ・アイスのスタンドを前に、足を負傷したポルナレフは大ピンチに。…起死回生の一手として思いついたのが、イギーの「愚者」でDIOの偽物を作り、背後からヴァニラ・アイスに奇襲を仕掛ける事でした。
途中まで上手く行ったか…!? と思いきや。
この部屋が太陽の光が差し込む部屋であること。そして何より、「本物」のDIOは自分を信じてこの場を任せたのだから、絶対にこの場所へ来る筈が無い…とヴァニラ・アイスは激昂。奇襲は失敗に終わり、偽物とは言えDIOの姿を攻撃させたイギーに対し、ヴァニラ・アイスの歪んだ怒りが炸裂しました。
自分のスタンド能力でイギーを暗黒空間へ飛ばすのではなく、素手でイギーをブン殴り、その後も更に執拗に蹴飛ばすその姿に、ポルナレフは戦慄します。
(こいつの精神こそ暗黒空間だッ! こいつの心の中がバリバリ裂けるドス黒いクレバスだッ!) ……全くその通りだと思いました。
ていうか、
やめろ―――ッ!!! ・゚・(ノД`)・゚・
イギーは所詮、小型犬のボストン・テリア。弱気で体も小さいボインゴみたいな奴ならまだしも、こんな筋肉ムキムキ&長身のヴァニラ・アイスなんかとリアルファイトしたらひとたまりもありません。
必死に「銀の戦車」で攻撃してひとまず自分の方へ注意を向けさせたポルナレフは、イギーの「砂」を巻き上げる事で、ヴァニラ・アイスのスタンドを攻略する手に出ました。
ヴァニラ・アイスのスタンドは、移動する時、結局「障害物」を飲み込みながらでなければ移動が出来ません。故に、砂を巻き上げればその砂が飲み込まれる軌跡で、ヴァニラ・アイスの攻撃ルートは読める訳です。
見事攻撃は決まり、ヴァニラ・アイスに致命傷を負わせた……筈が。
明らかに口から脳みそを貫通されたにも関わらず、何故かヴァニラ・アイスは死にません。
それどころかポルナレフを執拗に攻撃し、その剣から逃れて再び攻撃を続行します。
足を削られてしまい、殆ど身動きの取れないポルナレフに向かい、「円」を描くように攻撃を仕掛けるヴァニラ・アイス。その円はポルナレフを中心として次第に小さくなって行きます。…即ち、暗黒空間から姿を見せなくても、いずれはポルナレフを飲み込む事が可能となるワケです。
「銀の戦車」で倒れたイギーを何とか自分の元へ引き寄せたものの、イギーは既に満身創痍、戦闘続行不可能です。そしてポルナレフ自身も動けず、このままでは二人揃ってヴァニラ・アイスにやられてしまいます。
――絶体絶命の状況の中、ポルナレフはあまりにも有名な例の「三択問題」を自らに投げかけました。
このえぐられた足でどうやってあの攻撃をかわすか?
1.ハンサムのポルナレフは、突如反撃のアイデアがひらめく。
2.仲間が来て助けてくれる。
3.かわせない。現実は非情である。 ……なんでその
「3」の選択肢とか作っちゃった?(^^;)
こんな状況でユーモアに溢れ過ぎだろポルナレフッ!!(苦笑)
勿論、本当は「2」を選びたい所ですが、そもそも館の中に連れ込まれた承太郎達から10分経っても連絡が無かったから彼らも後を追って館へ突入した訳で、そんな状況で仲間が都合良く助けに来る、などという御都合展開は、WJの漫画といえども「ジョジョ」ではまず期待出来ません。
となると残るは「1」しかありません。
ポルナレフは、まずイギーを「銀の戦車」で円の外に逃がし、次いでヴァニラ・アイスの円が迫って来る前に自分の体を自分のスタンドで円の外へと引っ張ろうとします。
……しかし。
ポルナレフの「銀の戦車」は剣で切りつける事に特化したスタンドで、パワーはさほど強くありません。イギー位のサイズならともかく、成人男性の中でも大柄な部類に入るポルナレフの身体を引っ張るには、そのパワーは少しばかり不足していました。
攻撃が到達するまでの僅かな時間で、その身体を円の外へと引っ張るのは不可能。
……つまり、
回答は「3」。
現実は非情である。 死を覚悟したポルナレフですが、その目に、瀕死のイギーが「愚者」を出そうとする姿が映ります。
それ以上無理をして動いたりスタンドの力を使えば死ぬぞ、と制止するポルナレフ。
館へ突入する前にアヴドゥルが言った通り、旅の目的は
「DIOを倒す事」。何としてもイギーは生き残って、皆にこのスタンドの事を教えるんだ、皆死んだらおしまいだ……そう語りかけるポルナレフですが、イギーはポルナレフの言う事を理解している筈なのに、言う事を聞きません。
何度倒れそうになっても必死に起き上がり、「愚者」を出そうとします。
……しかし、ヴァニラ・アイスのスタンドは非情にもあと「一回転」でポルナレフを直撃する所まで来てしまいました。
「やつの執念の………勝ちってとこか。あばよ。イギー」
短く別れの言葉を告げるポルナレフ。
………しかし。
正解は「3」ではなく。
無かった筈の
選択肢4――「助ける筈のイギーに助けて貰った」でした。
床に落ちるポルナレフのイヤリング。
ポルナレフを倒したと確信し、姿を現すヴァニラ・アイス――しかしその頭上から、何故か誰かの血が滴り落ちて来ます。
ハッと頭上を見上げるヴァニラ・アイス。
そこには、「愚者」に抱えられて天井へと逃れたポルナレフの姿が……!!!
「イギー、スタンドを使うなとあれほど言ったのに………カッコつけやがって」
ヴァニラ・アイスのスタンドが直撃する寸前、イギーの「愚者」がポルナレフを上へ逃がして間一髪救っていたのです。
ありえない筈の光景を見て驚愕するヴァニラ・アイス。
自分をボッコボコにしてくれたヴァニラ・アイスへ一矢報いた事に対してか、ポルナレフを助けられた事に対してか、それとも両方か?
イギーはニヤリとドヤ顔を見せた後。
そのまま自らの砂の中へと倒れ込みます………。
イギー死亡。
ト書きと共に崩れ行く「愚者」。
その砂から感じられる感触、そして喪失感――それは「冷たい消滅」「命の消滅」……。近くで見て確かめずとも、分かってしまったその事実にポルナレフは慟哭します。
イギィ―イイイイ―――!! ポルナレフと一緒に私も叫んだよ!! 泣き叫んだよ!!! ・゚・(ノД`)・゚・
再び自らのスタンドの中へ姿をくらまそうとするヴァニラ・アイス。しかしその額を、「銀の戦車」のレイピアが貫きました。
「のろいぜ、ヴァニラ・アイス。
そしておめーの言うとおりだ………。おれには悲しい友情運があるぜ。助けるはずのイギーに助けてもらったぜ……」 砂の中に埋もれ、目を閉じたまま動かないその姿。
哀しみに暮れる暇も無く、ポルナレフは怒涛の攻撃でヴァニラ・アイスを圧倒します。
今度こそ倒れるヴァニラ・アイス。………そして。
サラサラと舞い降りる砂の中、埋もれて行くその小さな体に手を伸ばし。彼はエジプト上陸までの二週間足らずという短い期間、行動を共にした小さな仲間への想いを吐露しました。
おれは、こいつのことを好きだってことが 今わかった………。
おれっていつもそうだ…いなくなって はじめてわかるんだ。
ひねくれたクソ犬と思ってたけれど どんな人間にもなつかないつっぱったおめーが好きだった………。
いっぺんも愛想をふりまかねえその性格は 本当に誇り高い奴だったってことが 今になってわかった。 思えばしょっぱなから髪は毟られるわ屁をかけられるわ、第一印象は最悪。
行動を共にしていた間も、カフェでは見知らぬ客のケーキを食べちゃうわ、爆弾入りのオレンジ(ポルナレフは危うくこれを爆発させちゃう所でしたが)を拾って来るわ、少年が落としたアメを拾い食いするわ、助っ人どころか可愛くないクソ犬、としか思えない行動ばかりでした。
しかしよくよく見れば、ちゃんとジョセフさんがトイレへ行く時一緒に付いて行ったり、ホテル前で一緒に朝ごはんを待ったり。なんだかんだで承太郎一行にとって、彼は立派な「仲間」だった訳です。
しかし、そんなイギーも又、アヴドゥル同様にポルナレフを助ける為に力尽きました。
ポルナレフがイギーの事が好きだったと独白するシーンは、今読み返してもなんか目から熱いものが零れて来ます………。
せめて、館突入前、承太郎達からの連絡を待つ十分の間に、大好きなコーヒー味のチューイン・ガムを噛めていれば…良いなと……。
アヴドゥルに「豪勢な夕飯」をおごって貰う筈だったのに……。
失った前足のギ足を作って貰う筈だったのに……。
何のトラブルも無い平和な一生を送りたいだけだったイギーは、しかし最後の最後、ポルナレフを助け、ヴァニラ・アイスを倒すアシストを務めてその誇り高き生涯に幕を閉じました。
ヴァニラ・アイスは、DIOの血を与えられた事により「吸血鬼」体質となっており、ポルナレフによる攻撃を受けた後、窓から差し込んだ太陽の光によって塵となって霧散します。
死闘に決着が付いた、その瞬間。
ポルナレフの目に、天へ上って行くヴィジョンが一瞬だけ見えました。
無言で頷き、一瞬ポルナレフを見つめるアヴドゥル。その肩の上に乗っかって、やはりポルナレフを見つめてくるイギー。
二人は、何を伝えたのか?
それは彼らだけが知る事でしょうが、少なくとも、彼らのヴィジョンは本来ならこれ以上戦闘など不可能な筈のポルナレフに、再び力を与えました。
傷だらけの身体で立ち上がり、ポルナレフはDIOを目指します。今の自分には悲しみで泣いている時間などない、と………。
亜空の瘴気ヴァニラ・アイス編は、何度見ても読み返すのが辛い………。
けれど、元々人間にもDIOとの戦いにも無関心で、はっきり言って巻き込まれて迷惑だ位に思っていたイギーが、ポルナレフを助けてその命を燃やし尽くすシーンは、何度見ても静かな感動があります。
読んでいて辛いのに、第三部の中では屈指の好きなエピソードです。
■戦歴まとめ …いままでの戦歴を見て、イギーが倒した(又は倒す事に関わった)スタンド使い達をここにリスト・アップ。
・「ゲブ神」のンドゥール
・「クヌム神」のオインゴ&「トト神」のボインゴ
・「アヌビス神」
・「トト神」のボインゴ(二回目)
・「ホルス神」のペット・ショップ
・亜空の瘴気ヴァニラ・アイス エジプト九栄神の内、実に4人+ヴァニラ・アイスという、どれも強者揃いのスタンド使いを倒す事に貢献しています。……役に立たないどころか、メッチャお役立ちです。
本犬が意図してやったかどうかは不明なものが大半を占めているものの(苦笑)そこが、逆に「愚者」のイメージにぴったりだと思いました。
思えば、ンドゥール以外、イギーをまともに「敵」として認識していた敵はいなかったと思います。
皆、はっきり言って「只の犬」くらいにしか思って無いというか。……実際、ペット・ショップ戦までは明確に戦力になった描写も無いですし、登場シーンも少なめ。ぬぁめるようにィィィーイギーが出ているコマを探しているような、正に「イギーを探せ」状態でした。
ホル・ホース&ボインゴの時みたいに最後のオチ担当だったり、敵を倒した後、コマの隅っこで「アギ」とか言っていたり、欠伸して寝ていたり、そんなシーンが殆ど。
にも関わらず、エジプト上陸後からの参戦でこの戦歴。
この世のあらゆる理を知ってしまったが為に全てを捨てた「賢者」か? はたまた本当に「愚者」なのか? タロットカードの中でも掴みどころが無く解釈が難しい「愚者」の名前そのものな行動だったと思いました。
■イギーの奇妙な鳴き声特集 そんなイギーですが、数々の妙な擬音で有名な「ジョジョ」に出て来る犬の、それもスタンド使いだけあって、やっぱり鳴き声も結構奇妙なモノが多かったという印象です。
以下に、特にありえない鳴き声を集めてみました。
・「イギー」
・「グゲゲ」
・「アギャギィ――ッ!!」
・「アギ」
・「グガガ」
・「アググ」 ……うん。ありえないな、この鳴き声(笑)
■承太郎達にとってのイギーとは? 短い期間とは言え、承太郎達の立派な仲間だったイギー。
DIOの館で承太郎達とポルナレフが合流した時、
「アヴドゥルとイギーは?」 承太郎がそう尋ねる姿が印象深いです。
「ここまでは来れなかった」
……明確に事実を告げる言葉ではなく、婉曲な言い回しをするポルナレフの台詞にも、深い悲しみを感じます。
ぶっちゃけ、姿を消してもさして心配もされず(苦笑)、役に立たないだの何だの言われていた割に、しっかり皆からも
「仲間」の一人と思われていたんだ、というのが良く解るやりとりでした。
では、イギーの方は承太郎達をどう思っていたのか?
ふと考えてみましたが、結局、彼の方から承太郎達への友情だとか仲間意識だとか、そういうものは殆ど無かったのでは? と思っています。
しかし、同じスタンド使い同士、そして短い間ではあっても旅を共にしていく中で、心の奥深くで確かな絆は築かれていた。そう思います。
でなければ、ペット・ショップに散々やられて怒っていたとは言え、危険と解っている館の中までは同行しなかったでしょう。
それでも最後まで誰にも懐かず、決して「丸くなる」事もなかったイギー。
ポルナレフが言った通り、誇り高い奴だったと思います。
――さて、三回に渡って延々と書いてしまったイギー特集。彼の魅力が少しでも伝わっていれば幸いです。…生き残って、第四部でも登場して欲しかった…(相当な老犬でしょうが、まだまだ現役で闘えそうな気がします)第四部で出て来たネズミのスタンド使いとの戦いとかも見てみたかった……。
ジョジョ展ポスターでも立派に承太郎とツーショットを務めていますし、この機会にイギーファンが一人でも増える事を祈りつつ。
イギー……お前は紛れも無く
誇り高い「スターダストクルセイダース」の一員だった!!! イギーへの愛を叫んで、特集の結びとします。
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