ダイの大冒険特集―アバン先生の帰還について色々思うこと

 ダイの大冒険をリアルタイムで読んでいた時、一番やめてくれ!! と思っていたのが「アバン先生の復帰」でした。
 …カールの守りって何ぞ。(当時の私の心の声)
 アバン先生はあの時ハドラーからダイ達を倒す為に亡くなり、その心の中で生き続ける師だからこそだったのに…。ジャンプお得意のアレだよ…と、当時は思ったものでした。
 ポップの復活は何か許せた私でも、アバン先生はやめて欲しかった…そう思っていたのですが、今見返すと、必ずしもそうとも言えないと思っています。元々の既定路線だったのかどうかは不明ですが、アバン先生の復帰が、バーン戦に於いて非常に大きな意味を持っていた事は間違いありません。
 最終決戦に臨んだ主力メンバーの内、誰が欠けていても打倒バーンはキツかった、と正直思います。最後はキッチリ「男の責任」を取ってフローラ女王と結婚、ちゃっかりカール王国の王になったアバン先生。その復帰について、続きから色々考えてみようと思います。
■ハドラーとの関係について
 嘗て地上を席巻していた魔王・ハドラー。それを倒したのが嘗ての勇者であるアバンでした。
 それ以降、当然ハドラーは宿敵としてアバンとその弟子であるアバンの使徒を憎んで行く訳ですが……。
 マトリフ曰く「三流魔王」だった彼もストーリが進むに連れて良い意味で敵として成長を遂げます。そんな彼は、最終的に「黒の核晶」を埋め込まれ、大魔王バーンに良い様に利用されていただけと知り、自らが禁呪法で造り出したオリハルコンの親衛隊達と共に反旗を翻す側に回りました。
 しかしこの時、既に「強者」として認めていたダイ達と共に闘う事も今更出来ない。
 そう彼に言わせた最大の理由が、デルムリン島でアバン先生を死なせたのが自分だという重すぎる事実でした。
 ――しかし。
 最後の最後、互いに持てる力の全てを出し切り、ダイとの決着を付けたハドラー。
 キル・バーンの罠から最後の最後はポップを守ろうとしたハドラーを、ポップと共に炎の中から救い出したのは、嘗てのライバル・アバンでした。
 その腕の中で看取られた時、ハドラーの心にはどんな思いが去来していたのでしょう……。
 アバンもハドラーを一人の「強者」として認め、その最後を見送りました。
 アバンの復帰が無ければ、こんな名シーンも無かったんだなぁ…と、見返すと改めて思います。
 変な話ですが、ダイ達にとっては行く手を阻む強敵だったハドラーですが、最後の最後は、敵味方を超えた不思議な強者同士の理解・尊敬、そういったものが互いに芽生えていたと思います。
 結局の所、大魔王バーンに利用された一生だったかも知れませんが、ハドラーにとって救いがあったとすれば、最後は自らの意思で全力で戦い、互いに強敵と認め合った者達に看取られて最後を迎えられた事ではないでしょうか。
 正直、登場当初はハドラーがこんな良キャラになるとは思いませんでしたが、彼と深い因縁を持つアバンが、最後の最後そのハドラーを看取るシーンは、ダイの大冒険の中でも間違いなく屈指の名シーンだったと思います。

■一番弟子・ヒュンケルとの関係について
 そして矢張り、アバン先生と言えばその一番弟子であるヒュンケルとの関係は外せません。
 ヒュンケルの養父・バルトスの仇であるアバン。(実は本当の仇はハドラーであった、と後程判明する訳ですが)
 しかしアバンは、ヒュンケルが自分を父の仇として憎んでいる事を知っていて尚、バルトスの頼みを受け入れ、ヒュンケルが一人前の戦士となるまで厳しくも優しく見守り続けていました。
 その真意を、当時まだ少年だったヒュンケルが理解出来なかったのは当然だと思いますし、仕方ない事だと思います。ヒュンケルからすれば、誤解も何も本当の仇が実はハドラーだったなどという事は知りようもない事実です。それに、孤児だった自分に唯一「親」の温もりを与えてくれた存在を、どんな理由であれ自分から奪った事を許せないと思うのも当然の事でしょう。
 けれど、ヒュンケルが元々持っていた才能とその憎しみの強さは、結果的に卒業の日に悲劇を起こしてしまいました。
 復讐の刃を自分に向けて来たヒュンケルに対し、アバンは手加減する余裕が無く、結果的に誤解を解く暇もなく瀕死のヒュンケルは魔王軍の手で拾われてしまいました。
 その後、本来はアバンの使徒として地上の正義を守るべく戦う筈のヒュンケルは、魔王軍の不死騎団長として地上の平和を踏みにじる存在としてその剣を振るう事になってしまいます。
 ――あの時、バルトスが僅かでもヒュンケルに真実を告げる力が残っていれば。
 ――アバンにヒュンケルを諫められる力があれば。
 ほんの僅かの「たら」「れば」で変わったかも知れない事態ですが、こればかりは、アバン先生も、バルトスも、そしてヒュンケル自身も、どうしようもなかったでしょう。
 けれど結果としてヒュンケルは、とても自分の死などでは贖いきれない程の大罪を負う身となり、「自分を見守り続けていた師に剣を向けた」という重い罪の意識を持ち続ける事となりました。
 そんな彼にとって、実はその師がが生きていて、再び会う機会を持てた。
 それは、一つの救いとなったのではないでしょうか。
 折角の再会にも顔を背け、一人涙を流していた姿が凄く印象的です。
 そして久しぶりの再会となったアバン先生もまた、そんなヒュンケルの気持ちを良く理解していました。 言葉などなくても、互いに気持ちを理解し合う所を見ると、ミストバーンがヒュンケルに指摘したように、心の奥底ではアバンを敬愛していたヒュンケルと、そういう本心をきちんと分かっていたアバンの絆の深さが伝わって来ます。
 アバン先生が本当に死んでいたらこんな事も無かったんだと思うと、不思議と今はアバンの復帰も「アリだ」と思える自分がいます。
 バーンパレスに突入する時、わざとアバンに反抗するような態度を取り、殿を引き受けたヒュンケル。
 それは、アバンが嘗てヒュンケルに教えた戦術の実践でもありました。その事からも、紛れもなく彼が「アバンの使徒」なのだという事が浮き彫りになって来ます。
「昔からあの子は、心にもない言動をとって 私を困らせる時には いつもあんな目をするんです。…寂しさと…申し訳なさが同居してるような…ああいう目をね…」
 成長し、今や自分以上の立派な戦士となった姿を目にしても、愛弟子は愛弟子のまま。もう20歳になり、一人前の大人の戦士となったヒュンケルを「あの子」と呼ぶ姿に、師である以上にヒュンケルにとってはもう一人の父であったかも知れないアバンの深い想いが見て取れます。
 追撃の連中は、私の自慢の一番弟子が相手をしてくれています、と誇らしく言い切る所にも、ダイやポップ達とはまた違う、師弟以上の絆を感じました。
 そして何よりも。
 アバンをヒュンケルにとっての「光の師」とするならば「闇の師」であったミストバーン。
 その決着が付いた時のあのやり取り。
「………先生……。あなたにとって…オレはなんですか?」
 ミストバーンは「お前は私の武器だ、道具だ」と告げました。
 では、アバンはどう答えるのか…?
「?」
 唐突な問いかけに、アバンは一瞬考えた後。
 何でそんな当然の事を聞くのですか、と言いたげに、躊躇なく言い切りました。
「…決まってるでしょう。…誇りです…!」
 差し伸べられたその手を取ったヒュンケル。
 …この時やっと長きに渡る蟠りが消え、二人は正真正銘の師弟として和解出来たのだ…と思いました。
 文庫版で読み返して改めて、このシーンがあっただけでも、アバンが帰って来た意味はある…。
 そう思った私です。
 ヒュンケルが犯した罪の大きさは計り知れないもので、アバンと和解出来たとしても、彼の罪が消える訳ではありません。
 けれど、きっと自分が「アバンの使徒」として生きる上で一番辛い重荷であったであろう「師に剣を向けた」事の清算が一つ出来たというだけで、彼にとっては大きな事ではないか。…そう思いました。

 今回はアバンと最も深い関わりのあった二人から考えてみました。しかし、勿論マァムやポップ、ダイ、そして修業期間は最短で卒業(?)となったレオナ姫。
 彼らにとっても、大切な先生が帰って来たという事実は大きなものだと思います。
 大魔王バーンを倒したとしても、色々と解決していかなければならない問題は多いでしょう。
 単純な実力という意味では師を超えても、若い弟子達にはまだまだこの先立ち塞がる壁は多い訳で、そんな彼らの導き役として一番相応しいのは、やはりアバンだと思います。(マトリフも勿論若者たちの導き手として重要な存在ですが)
 カールという強国の王という立場となったアバン先生ですが、これからも世界のかじ取り役の一人として、そして若き弟子たちを見守る存在として、彼が果たして行く役目は大きい、と思います。

 ――以上、アバン先生の帰還について色々思うことを書いてみました。
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No title

たしか、コンビニ版の作者インタビューだったと思いますが、キルバーンは、アバンを復活させるために作られた悪役だったとか…

アバンという、経験豊富である意味狡猾な人物でなければ倒せない敵、というコンセプトで作られたキャラクターだったそうです。

コメントありがとうございます! >TOMさま

こんばんは。
そう言えば、今コンビニ版が出ていますよね…! 作者インタビューが載っているのですか。

> キルバーンは、アバンを復活させるために作られた悪役だったとか…

成る程…。アバン先生は単純な戦闘力という点ではダイ達に追い越されてしまってはいるものの、帰って来た後は持ち前の知識や経験で戦う姿が凄く好きでした。
インタビューの通り、キルバーンタイプの敵は、アバン先生のようなタイプの人が戦うにはうってつけな相手ですね。…という事は、既定路線だったのでしょうか…アバン先生の復活は。
キルバーンとの一騎討ちは、ダイの大冒険の中でも名勝負だったと思います。

アバン先生の復帰

この漫画読んで、アバン先生がなんでしんでしまったのか、キャラ的にかなり気に入っていたので、作者さんに生き返らせてくださいって、手紙を書いたことがあったんです。もしかしたら、それでかもしれません。

Re: アバン先生の復帰

 こんばんは。
 アバン先生は、きっと同じように復活を望む声は多かったでしょう…!
 後にアバン先生が戻って来たのも、そうした読者の声の影響も、もしかしたらあったかも知れませんね。
 でも結果的にはアバン先生は戻って来て良かったな…と思いました。。
プロフィール

星野 海紀

Author:星野 海紀
徒然なるままに様々な事を書き綴っています。現在は「キングダム」&「ゴールデンカムイ」、「テラフォーマーズ」に熱いです。他に聖闘士星矢や遊戯王、旅行記等、話題の範囲は広いです(笑)

連絡先:natch.2002ina★gmail.com (★をアットマークに変えて頂ければと思います)

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