■第97話 ELEMENTS 持ち場と要素 優しくて、強すぎる慶次がオニヤンマゴキに圧巻のK.O.勝ちを収めたと思ったのも束の間。
アネックスを取り巻く状況は厳しさを増す一方でした。
残り時間、約14分。
この間にもゴキの大群はアネックスを囲み、爆1号2号3号…と対峙するマルコスも、如何に神速を誇ると言っても状況は決して有利とは言えません。
慶次は右腕を失った状態となり、その上扉もオニヤンマゴキをK.O.した時の衝撃が仇となって開かなくなってしまいました…。非戦闘員達は、もう自分達の力だけで道を切り開かなければなりません。
愕然とするアネックス突入組の皆さん。
しかし、時間が無い以上、最早前へ進むほかありません。活路は、
前だ…!! という訳で、ウォルフさんは最終地点、すなわち館長室の真下にある
「通信コントロール室」で落ち合おうと扉の向こうの慶次に言いますが…。
慶次は、まず
「例の場所」とやらへ寄るようにと告げます。
理由は
「アレ」が必要になるから、と。
…例の場所とは何処なのか。そして「アレ」とは何なのか? それは後でのお楽しみ…として。
当然「通信コントロール室」は、今は第4班の生命線。そこには、勿論最終兵器彼女である紅ちゃんと、彼女を護衛する爆くんがいます。そう言えばオリジナルの爆くんが誰なのか? 気になる所ですが、それはさておき。
慶次は「アレ」が無かった場合に備えて、甲殻型の自分が先行、通信コントロール室で待ち構えている筈の4班の戦闘員達と対峙する、と、真っ直ぐコントロール室を目指します。
恐らくこの辺りはミッシェルさんから授けられた策だと思うのですが、果たしてその通り。
コントロール室の前には、紅ちゃん&爆くんがスタンバイしていました。
「艦内(なか)からでも構わない。変態(や)れ」 …急ごしらえの防護装備で、果たして全開の紅ちゃんの毒素に対抗出来るのか? 答えは恐らく「NO」。今は、まだ紅ちゃんの毒素がそこまでの濃さではないから何とかなっているだけで…。
しかし紅ちゃんは、アレキサンダー先輩の一件もあり、それに躊躇いを感じているようです。
防護服を着ていない「生きた人間」が来る。…その事実に躊躇いを覚える彼女ですが、爆くんはそんな彼女をしばき飛ばします。
「……状況わかってる?」
淡々と語る爆。
彼は、皆を裏切った自分達が生きていられるのは、今は
「地球との通信が遮断されているから」だと告げます。
万が一この通信コントロール室に1、2班の誰かが侵入&地球との通信を復旧し、「助けて下さい!」…なんて言った日には、流石にもう何もできなくなってしまいます。
何しろ今は、新たに登場した一郎の兄弟「二郎」が報告していた
「一足先に火星へ発った」戦艦が他の国の皆さんを口封じ→その罪はゴキ達に押し付けようという計画を実行中なのです。
それは勿論、地球との通信が遮断されていて、どこの国もハッキリとした「証拠」を掴めていないから出来ること。
流石に裏切りの証拠を掴まれてしまったら、今迄のようにやりたい放題は出来なくなってしまいます。
勿論、そうなればまず、火星にいる第4班の皆さんは真っ先に切り捨てられるのは間違いありません。…その時は、アレキサンダー先輩もチラッと言っていたように、本人だけではなく
家族にも咎は及ぶでしょう。
ならばと開き直って今の計画を強行すれば、下手したら戦争です。
…そうなれば、今の比じゃない犠牲が出る。
爆はそう言って、紅ちゃんに特性の発動を促します。
「君が今更ビビったところで彼は生き返ったりしないし、今更ビビってたらむしろ彼にも申し訳ないと僕は思うな」
「毒素(どく)でここを衛(まも)るのが紅(キミ)の仕事だ。後戻りする事の出来ない君の任務だ。君を 君の家族を、君の仲間を守るために――ここで変態して、簡素なコートとマスクもどきで身を包んでいるだけの一・二班に、特濃の"兵器細菌"を喰らわせるんだ!」 …色々と言ってる事は、彼らなりの正論なのだろうとは思うのですが…何故でしょう。
コイツが言うと、こんなにもムカつくのは…ッ! メチャ許せん気分になります。
君の仲間を守るため、だの、家族を守るため、だの言っていますが。…全くそこにそういう感情がこもってない感じが恐ろしく不気味です…。
全て後ろに「(棒読み)」とか付けたくなるくらい、心がまるで伴っていないというか。
こういうヤツだから、そのおぞましい「特性」でも平然としていられるのでしょうか………。この特性を使って「増えた」自分を何人も目にして、それでも尚狂わないというのは、それ自体が既に「狂っている」気がしてなりません。
そして、一方。
ウォルフの案内の元「例の場所」へ急ぐ非戦闘員達。彼らが求めていたものは、正にその紅ちゃんの恐るべき特性から唯一身を守る事が出来る「防護服」でした。
何故慶次を先に行かせた、アイツにも必要だろ。
…なんか先々週辺りから、メッチャ慶次を心配しているユニコーンのお姉さん。…しかしウォルフは、恐ろしい事実を告げます。
慶次は、どの道
あれを着れない、と。
戦闘するとき、慶次の腕はその特性で膨れ上がります。………防護服は、そんな慶次の特性に合うようには、作られていません。
考えてみれば、第4班の面々ですら、防護服を着ている時は殆どその特性を使えない状況になるのです。
…でも、そうすると。
慶次くん、どの道犠牲になる可能性がめっちゃ高いじゃないですか………。(ノД`)・゜・。
そもそも、第4班の戦闘員だって、幾ら慶次といえども油断出来ない猛者揃いです。…その彼らを倒せても、紅ちゃんの毒素には対応する術がありません。
ウォルフ達は知らないですが、慶次は現在右腕を失う重傷。その上簡易的な防護ですら、密閉状態が失われている状態です。そんな状態で、「特濃」の毒素を喰らった時。
持ちこたえられる「残り時間」は14分よりも、もっとずっと縮まるのではないでしょうか………。
それでも何も言わず、前へ進む慶次。
漢過ぎですが……ッ、慶次…慶次………ッ君の頭上に輝く星が見えるよ………(涙)
とにかく、前へ進むほかないウォルフ達。
ウォルフは、爆が何らかの「特性」で増えていると読んでいました。そしてその為には、恐らく大量のエネルギー源を要するだろうとも。そこはエアコンが独立していて、エネルギー源も豊富な「食糧庫」であるN-1エリア。
この洞察力はパネェと思いましたが、しかし…だがしかし。
増えた爆も防護服を着ていたという事は、つまり。
爆が「増えている」場所へ行けば、大量の防護服の予備がある筈…という所までは良いんです。
しかし!!!
それはつまり、
爆くんがいっぱい状態の素敵なお部屋に、非戦闘員の皆さんだけで突撃しなきゃならないという事を意味しませんか…!?(汗)
爆くんがお着替え中だったらまだ良い(?)かも知れません。爆くんのお着替えシーンなんて誰得状態ではありますが、少なくとも速攻で戦闘は出来ないでしょうから…。
しかし、既に防護服装着済みの爆くんが手ぐすね引いて待っていたら…!?
ヤバイ、それはそれでヤバイですよウォルフさん!!
という私の心配を他所に、ナレーションは現在の状況を淡々と説明します。
作戦全ての要衝たる通信コントロール室を衛る爆&紅ちゃん。
そして、懸命に策を廻らせ、その「通信コントロール室」から「電波塔」を制圧しようとする慶次達。
…しかし、何か忘れています。
そう、
ヤツらです。まだ死んでなかった、あのオニヤンマゴキが、何かを手にしています。…ねぇそれ、何? 何持ってるの? ねぇ!?
まさか「薬」で、更なる変態を…と慄いた私ですが、ある意味それ以上にヤバい事態がアネックスでは起きつつありました。
オニヤンマゴキが持っていたのは、薬ではなく通信機でした。
そこで流れるじょうじじょうじな艦内放送。独身の幹部を教えてくれた小町艦長のオシャレな艦内放送とは雲泥の差です。
…そして、その謎の放送を聞きながら、ウォルフ達が目指す「N-1」エリアから現れたのは、防護服を着た………。
ゴ…
ゴキ公だァ―――ッ!!! しかも何か持ってる!! なんだかんだですんごい特徴捉えてる紅ちゃんの人相書きまで持ってやがるッ!!!
そう、電波塔を目指していたのは、ゴキ達も同じだったようです………。
ウォルフさん達、逃げて!!!
超逃げてッ!!! N-1エリアから防護服を着たゴキ達が出て来たという事は、……そこで増えていた爆くん達も恐らく全滅めつめつめつ。そして、
その特性も………。
もはや絶望しか見えねえ!!!
残り時間は、あと12分。
しかしそんなカウントに、何の意味があるのか………。
もう、12分どころか5分と経たずにゲームオーバーになりそうじゃないですか………。
ゴキ達が
「通信機」というものまで理解し、そしてその用途もちゃんとわかった上で使用しているという事実に改めておぞましさを感じます。…果たして、アネックス攻防戦の行方は…!?
一郎、何とかしてくれー!!!
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